240W Charging

結論

USB PD 充電規格の技術仕様が拡張されました。新しい仕様では、USB Type-C ケーブル経由で最大 240W の電力を供給することができるようになります(これまでの最大は 100W)。これにより、以前の PD 規格の範囲が SPR(標準電力域、Standard Power Range)と呼ばれ、新しい仕様による増加部分(100W 以上240W 以下)が EPR(拡張電力域、Extended Power Range)と呼ばれるようになります。

拡張機能のメリット

最大 240W までの電力供給が可能となり 1 本の USB-C ケーブルの接続で、ゲーム用ノート PC のような大容量を消費するシステムへの電力供給ができるようになります。また、他の USB デバイス(周辺機器)へのより多くの電源供給も可能になります。

これにより、ノート PC を外出先で使用するときでも、製品に付属してきた重たい専用電源アダプターではなく標準化された PD 準拠アダプターを利用できるようになり、より便利になります。

背景

USB-IF(USB 標準規格策定団体)は、2021 年秋にシアトルで開催された USB デベロッパー会議において、新しい USB 技術仕様を発表しました。この会議に参加した Plugable 社のチームメンバーやその他の業界関係者は、新しい仕様がどのようにして設計されたのか、またなぜ設計されたのかについて、USB-IF から直接情報を得ることができました。

技術仕様

拡張電力域(EPR)

  • 最大 240W の電力をサポート(28V、36V、48V / 5A)
  • EPR の電力ネゴシエーションは、現在の USB PD 充電規格 (PD)とほぼ同じもの
    • 提供、要求、受理、拒否というこれまでと同じシーケンスフローを使用
    • これまでと同じ要件の性能メッセージを使用して、シンク(電力を消費する USB 機器)が新しいソース(電力を供給する USB 機器)を評価し応答する
  • EPR 電圧最大値は 48V に制限
    • 48V は、設計上の安全マージンを考慮した場合の現実的な限界

可変電圧供給(AVS、Adjustable Voltage Supply)

  • EPR モードでは、AVS により 15V ~ 48V の間で 100mV 単位で最適な電圧を微調整することができ、性能と熱効率が向上する
  • AVS は基本的に、『選択可能』な固定電圧を採用
  • EPR では、標準電力域(SPR)内における PPS(プログラム可能な電力供給、Programmable Power Supply)ではなく、 このAVS(可変電圧供給)機能が必要となる

EPR における過電流保護の仕組み

  • EPR を使用する前提として、最初に SPR 内で明示的な電力契約を結ぶ必要あり
  • プロセス開始はシンク(電力受容側)が主導する。言い換えれば、シンクはこのプロセスが必要であれば自ら要求しなければならず、ソース(電源供給元)が EPR の開始を強制することはできない
  • ソースは、シンクおよび使用されている USB-C ケーブルがすべて EPR 対応であることを確認する
  • シンク からの EPR 要求メッセージ内には POD(パワーデータオブジェクト)のコピーが含まれており、これにより検証が行われる
  • EPR を使用するには、シンクが約半秒ごとに「生存(Keep Alive)」メッセージを送信し、両端がオープンでアクティブであることを提示しなければならない。約 1 秒間このメッセージを確認できない場合、ソースはハードリセットを開始し、SPR モード/5V の動作に戻す

EPR 対応ケーブル

  • PD 規格当初からの 5A 定格ケーブルは廃止されつつある
    • 最終的には、当初から販売されている 20V/5A ケーブルは USB-IFによって認証されなくなる
    • 「5A ケーブルはすべて EPR に対応している」という状態に市場を移行させることが目的
  • USB-IF による EPR 対応の認証を受けるためには、そのケーブルが 240W をサポートしていることをユーザーが識別できるよう、目に見える形で表示することが必須となる(従来これは任意)
  • e-marker の変更に伴い、USB ケーブルのバイパスコンデンサの最低電圧定格が(30V から 63Vへ)変更され、サイズが変更になる可能性がある
    • 高電圧化により、ケーブルの絶縁に影響が出る可能性がある

Loading Comments

Article ID: 586789421287